湘南モノレールは江ノ電と比べるとはるかに地味な存在ですが、ジェットコースターにも例えられる超個性派の路線です。全線を乗り通し、途中の見どころを網羅してみました。
- ジェットコースターに例えられる路線
- 跨座式と懸垂式のどちらがいいのか
- やはりジェットコースターそのものだった
- プラレールやルーフテラスもある湘南江の島駅
- 「湘南のジェットコースター」のポテンシャルはこんなものではない
ジェットコースターに例えられる路線
湘南モノレールは大船駅と湘南江の島駅間の6.6㎞を約14分で結ぶモノレール路線で、跨座式の東京モノレールや多摩都市モノレールと違い軌道の下に車両がぶら下がる懸垂式であるのが最大の特色です。1970年3月に大船~西鎌倉間 4.7kmの部分営業を開始し、1971年7月に大船~湘南江の島間6.6kmの全線が開通しました。
大船から鎌倉山を越えて江ノ島まで伸びる道路(日本初の自動車専用道路)に沿って設けられており、曲がりくねった軌道をそれもかなりのスピードで走り抜けます。懸垂式であるため車体の下には何もなく、道路を走る車を飛び越えていく様子を見ているとまるで空を飛んでいるような不思議な感覚になる路線で、ジェットコースターに例えられる路線です。
跨座式と懸垂式のどちらがいいのか
日本のモノレールは東京・大阪・北九州・沖縄など跨座式が圧倒的で、懸垂式は湘南モノレールと千葉都市モノレールのみと限られています。
跨座式の最大のメリットは構造が簡単であることで、これにより建築費が安くなることに加えて建設用地も狭くできます。一方で雪が降れば除雪が必要で、軌道が凍結すれば運転できません。
懸垂式は駆動部分が箱型の軌道内にあるので騒音が少ないうえ、雨風に晒されないので保守面で有利であり、懸垂式よりも急カーブを通すことが可能です。しかし軌道と軌道支持部分の構造が大掛かりになるので建設費が高くなることが難点です。
湘南モノレールが開業した時代は跨座式と懸垂式が優劣を競い合っていた時期で、懸垂式の優位を示すために鉄道にとって過酷なこの区間がモデルケースにされたと言います。アップダウン、きついカーブ、そして驚くようなスピードというジェットコースターそのものといってもよい特徴は懸垂式の優位をより強調するためのものだったのかもしれません。
やはりジェットコースターそのものだった
スイカ・パスモが使えるようになった大船駅
湘南モノレールに乗るのは5年ぶりです。
日中は基本的に7分半間隔で朝夕はとんでもなく混雑するそうですが、これ以上間隔を詰めることはできないようです。
路線図です。併記されている「アップダウン図」がなかなかいい味出しています。
5年前はパスモ・スイカ不可でしたが、2018年4月1日より使用可能になっています。この日は地元の人たちにとっては歴史的な1日なのだそうです。
懸垂式モノレール特有のホームの光景です。この高さなら柵もホームドアも不要でしょう。
大船駅~富士見町
スタートの段階で少しのけぞってしまうような加速です。
発車してすぐに右に左にカーブが続きます。しっかりと踏ん張っていないと横揺れに対応できません。
一般道の上を走るため道路上に高さ4.5mの制限がかかっています。道路の上に板を渡したような富士見町駅の形状が何とも言えません。
大船~富士見町の動画
富士見町~湘南町屋
道路に沿って山を上がっていきます。きちんとカントをとっており、こんなカーブでもスピードを落とさず曲がります。
湘南町屋~湘南深沢
少し上がった後、急な下り坂に驚かされます。
湘南町屋~湘南深沢の動画
湘南深沢駅到着直前、運転席に入る車掌を通すためよけています。
湘南深沢~西鎌倉
湘南深沢駅を過ぎると同じような高さの建物の間を縫うようにして走ります。
鎌倉山の上りに入ってきました。
一旦道路から離れます。
トンネルに向かっていきます。相当スピードが出ていることがお分かりいただけると思います。
トンネルに入ります。
トンネルから出た直後。最高時速75㌔だそうですが、体感ではもっと出ているように感じます。
西鎌倉駅の手前だと思いますが、一旦右に曲がってその後大きく左にカーブします。
湘南深沢~西鎌倉の動画
この区間は最もスピードが出るので動画も揺れます。
西鎌倉~片瀬山
戸建ての住宅の間を縫ってほぼ同じ高さを走ります。
片瀬山~目白山下
片瀬山駅に停車中です。空を飛んでいるようだったこれまでとは一転して車体の底を擦ってしまいそうな高さとなり、はなはだしく違和感がありました。
前方に相模湾の風景が拡がっています。
大きくカーブし海が左手になりました。
目白山下駅の直前です。この辺りはひたすら下りです。
片瀬山~目白山下の動画
目白山下~湘南江の島
目白山下駅に停車中です。最後のトンネルが目の前です。
終点の湘南江の島駅はビルの5階です。
プラレールやルーフテラスもある湘南江の島駅
湘南江の島駅は大きく変わっていました。
以前はコンクリートむき出しの殺風景な光景の中を5階まで階段で上がった記憶がありますが、見違えるような空間になっていました。
湘南モノレールのプラレールが展示されていました。これは大変に珍しいのではないでしょうか。
改札階にはルーフテラスも設けられています。
天候にも恵まれ、富士山と相模湾の眺めも楽しめました。
「湘南のジェットコースター」のポテンシャルはこんなものではない
湘南モノレールはまことに地味な路線です。通勤・通学客が利用客の9割ということで完全に地元住民の日常の足として定着していますが、本来のポテンシャルはこんなものではないと思います。日本を代表する観光地である江の島への江ノ電と全く違ったタイプの導線としてもっと脚光を浴びる日が来ることを願ってやみません。のんびり走る江ノ電とジェットコースターの湘南モノレール、どちらも魅力的です。