大船軒は東海道線藤沢駅のホーム上にある昔ながらの駅そば店です。一度見たら忘れられない外観と伝統を感じさせる濃いめのつゆが最大の特徴で、こういう個性的な店は残さなければなりません。※2023年7月16日より当面の間休業ということになったようです。
昔ながらの駅そば店
駅そば 大船軒 藤沢そば店は東海道線藤沢駅ホーム上に出店している駅そば店です。
駅そばは本来「駅の立ち食いそば屋」と呼ばれていたもので、階段下のスペースを有効活用した厨房とカウンターのみの店というのが普通でした。しかし現在では空調の効いた店内に椅子とテーブルが設けられているというのがほとんどで、立って食べる店というのは少数派だと思います。
大船軒は今ではすっかり珍しくなった昔ながらの駅そば店で、6人くらいでいっぱいになりそうな狭い店内で客は立ったままでそばを食べています。いろり庵きらくばかりになってしまったJR東日本管内の駅そばの中では大変に珍しい店といえます。
大船軒の意外な歴史
大船で旅館を経営していた富岡周蔵が1898年に駅構内での弁当販売を開始したことが大船軒の創業で、翌年にはかつての内閣総理大臣だった黒田清隆のアドバイスでサンドイッチ弁当の販売を開始します。その際にハムの自家製造まで開始したのですが、それが現在の鎌倉ハムです。
現在の主力商品である鰺の押寿司の販売を開始したのが1913年で、当時江ノ島近海で湧くように獲れた鯵に注目し、これをなんとか駅弁に出来ないかと思案の末に思い付いたといいます。
駅そばの営業を開始したのが1957年で当初は周辺の駅で幅広く展開しましたが、現在では藤沢駅と根岸線の本郷台駅だけとなっており、特に2018年3月の大船店閉店は地元のファンにとっては大事件だったそうです。
2009年にJR東日本系列の日本レストランエンタープライズ(NRE)の完全子会社となり、その後NREが合併を繰り返したことにより現在はJR東日本クロスステーション傘下となっているようです。従って形の上では「いろり庵きらく」と同一のチェーン店となっています。
つゆの甘さが最大の特色
藤沢駅の大船軒は駅の階段下の空間を利用した昔ながらの店構えです。この日はホームが大変に混雑していました。
いまどき珍しい引き戸の店で、この日は戸が全開となっていました。
私は駅のそば屋ではほぼ100%かき揚げそばと決まっています。つゆをすすってみるとかなり濃いめで甘く、それを吸い込んだかき揚げもまた甘さが感じられました。かき揚げは箸でつつくと簡単にほぐれ、その油が溶け込んでつゆがちょうどいいコクになっています。
麺はどうやらかつてのあじさい茶屋や濱そばと同一のものを使用しているようで若干不満を感じましたが、超個性的なつゆと天ぷらがそれを補って余りあるものがありました。
個性的な店は残ってほしい
大船軒は大資本の傘下となって形の上ではいろり庵きらくと同一の系列店となっていますが、昔から愛されてきた甘いつゆだけは死守しているようです。こういった個性的な店はいつまでも残ってほしいものだと思います。
当面の間休業
7月22日に三島に向かうべく藤沢駅のホームに出てみると大船軒が「当面の間休業」となっていました。個性的な駅そば店がまた一つ減ってしまうのでしょうか。
駅そば 大船軒 藤沢そば店について
主なメニュー
かき揚げそば・うどん 420円
かけそば・うどん 310円
ざるそば・うどん 360円
たぬきそば・うどん 400円
店舗概要
駅そば 大船軒 藤沢そば店
営業時間
6:45~20:00(平日)
6:45~15:00(土)
定休日 日・祝
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