今回は中古マンションの購入の際に気になる、管理の良し悪しの見分け方について書きたいと思います。私は不動産関連で19年の実務経験がありますが、その約半分はマンション管理会社でフロント業務に従事していました。ネット上にはマンション管理に関し様々な記事が投稿されていますが、そのほとんどが管理の実務経験のない方が書いたもので、現実にはあり得ないことが数多く記載されているので注意が必要です。
- 「買ってはいけないマンションの見分け方」には注意が必要
- 内見から契約までの実際の流れと、どうしようもない現実
- 資料の入手はやろうと思えばできるが簡単ではない
- 申し込み前に管理組合の財務状況を把握するのはほぼ不可能
- 修繕履歴の調査は一般人には不可能
- 共用部の管理状況のチェックにはオートロックの突破が必要
- 管理組合の内部事情は聞かれても答えない
- じゃあどうすればいいのか?
「買ってはいけないマンションの見分け方」には注意が必要
「マンションは管理を買え」という言葉が広く使われ、「中古マンション 管理」と入力して検索すると、「買ってはいけない物件の見分け方」「管理がダメなマンションの見分け方」といった「ハウツー物」の記事がズラリと登場します。
内容としては、マンションを購入する際の事前のチェックポイントをいくつか紹介しており、「シビアな目でしっかり選べば中古マンションでも良い住まいを手に入れられる」とまとめているのが常ですが、どれも不動産取引の実態を知らないと思われる内容ばかりであり、私としては到底黙っていられません。
事前のチェックポイントとしては、大抵の場合「管理組合の財務状況」「過去の修繕状況」「共用部の管理状況」「入居者同士のトラブルの有無」の4点が挙げられていますが、実は内見から申し込みまでの間にこれらを十分にチェックするなど不可能に近いことなのです。
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内見から契約までの実際の流れと、どうしようもない現実
中古マンションを購入する場合、仲介業者が紹介してくれた中から気になった物件を内見するところから始まります。恐らく複数の部屋を見ることになると思いますが、その中で最も気に入った物件に申し込みを入れます。
申し込みが入ると仲介業者は契約の準備に入ります。重要事項説明書(重説)を作成するためには管理組合の様々な情報を入手しなければならず、そのために管理会社に対して「重要事項調査依頼」といった形式で、手数料を払って開示請求します。先ほど挙げた四つのチェックポイントの内、「管理組合の財務状況」「過去の修繕状況」はこの中に入ってきますが、重説の書式の中に納めなければならないため、内容としてはかなりかいつまんだものとなります。
売主と買主は、このような流れで作成された書類の説明を受けた上で契約書類を取り交わします。つまり現行の不動産取引では、「管理組合の財務状況」と「過去の修繕状況」は契約直前になるまでわからないのです。いいかどうかは別問題としてこれが不動産取引の現実であり、ハウツー物の筆者はこのことを知らなすぎます。
資料の入手はやろうと思えばできるが簡単ではない
ハウツー物の記事では「長期修繕計画書」「総会の議案書」「直近の決算資料」「総会議事録」といった資料を取り寄せて内容を確認することを勧めています。
売主がこれらを保管していることは期待しない方がいいでしょう。そこまで管理に関心がある人ならそもそも売却しません。
従ってこれをやるためには、申し込み前の段階で管理会社に開示請求するというかなりイレギュラーな業務が必要です。
「これらの資料は、閲覧することが認められており、仲介業者に取り寄せてもらいましょう」と軽い表現で書いていますが、実はそんなに簡単な話ではないのです。閲覧だけなら無料であっても、検討資料として持ち帰るためには印刷しなければならず、先ほどご紹介した「重要事項調査依頼」同様に手数料が発生します。仲介業者は契約成立時の仲介手数料以外の金を客から貰えないため、当然これらの費用は仲介業者が負担しなければなりません。
買うかどうかまだわからない段階で、こういった面倒な業務を仲介業者がすんなりとやってくれるとは私には思えません。フロント時代、契約のための「重要事項調査依頼」なら私はいくらでも受けましたが、このような請求を仲介会社から受けたことはありません。
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申し込み前に管理組合の財務状況を把握するのはほぼ不可能
仮に資料が入手できたとしても、今度はそれを読み解くのが大変です。
「管理組合の財務状況」については直近の総会議案書(議事録ではない)に書かれていますが、ここには膨大な量の数字が並んでいます。(写真の議案書では財務状況の資料だけで40頁ある)
中古マンションを検討している方は持ち家は初めてという事例が多く、そのような方にとっては一般会計と修繕積立金会計に分かれたマンションの決算資料を見ること自体初めての経験です。「財務状況は適正か?」「修繕積立金は十分に貯まっているか?」「未収金が多すぎたりしないか?」等々のチェックポイントを挙げていますが、そんなことわかるはずがありません。(仲介業者の営業マンも同様)
修繕履歴の調査は一般人には不可能
「過去の修繕状況」に関して言えば、これをまとめるのはフロントでも大変で、一般の方には不可能です。
修繕状況をチェックするため「長期修繕計画書と直近の決算書を照らし合わせ、数字が一致しているか確認する」なんていう記事もありましたが、無知にも程があるというものです。長期修繕計画はあくまで目安であって、計画と実際の修繕にはズレがあるのが当たり前で、数字が一致するなどほとんどないはずです。
「販売担当者やマンション管理人に、管理組合の理事か管理組合活動に熱心な住民を紹介してもらい、管理の実態を尋ねてみる」と言われましても、個人情報にやかましい時代にこのようなことは絶対に教えません。
共用部の管理状況のチェックにはオートロックの突破が必要
「共用部の管理状況」を見抜くために「共用部の清掃状況」「自転車置き場の整理具合」「掲示板」がチェックポイントとしてよく挙げられます。
そして業者の案内による内見では都合の悪い事実は出てこないということで、ご丁寧にも「気に入った物件に関しては自分の足で再訪してみてほしい」と勧めている人もいました。
現代のマンションでこれらをチェックしようと思ったら、その都度オートロックを突破しなければなりません。また掲示物が定期的に貼り替えられているかを確認するためには一定期間通い続けなくてはならず、恐らくその間に不審者としてマークされることになるでしょう。
管理組合の内部事情は聞かれても答えない
「入居者同士のトラブルの有無」を調べるためとはいえ「上下階や両隣にどのような人が住んでいるか」など管理会社は聞かれても絶対に答えません。
仮に総会議事録を読んだとしても、そこに書かれているのは「質疑応答の要旨」であって発言の全てではありません。総会において居住者間のトラブルに関する発言が仮になされたとしても、個人が特定されるような事項は議事録には記載しないものです。
じゃあどうすればいいのか?
マンションの管理というものは様々なものがからまりあったややこしい世界です。ですから「管理の良し悪し」を外部の人が短期間で見抜く「コツ」など存在しないと断言してもいいと思います。
私としては大手が管理している大規模物件をお勧めするとしか言えません。
そのようなマンションは管理会社としても重要であるため絶対に管理を切られることがあってはならず、恐らく会社の中でも優秀なフロントが担当していると思われます。更に課長、支店長といった複数の眼でチェックされることにより、適正な管理が行われている確率が高いと言ってもいいでしょう。
念入りにチェックするのは大切ですが、営業マンが決断を迫る時の常套句である「早く決めないと部屋が無くなりますよ」はあながち嘘ではありませんので注意してください。結局のところ不動産の購入というのは「イチかバチか」なのだと思います。
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★最後までお読みいただきありがとうございます。
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