今回は「家は借りるのと買うのとどちらが得か?」という議論について考えます。これは私が不動産業界に転身した20年前に既にありましたので、恐らく30~40年続いているものでしょうが、いまだに結論が出たという話を聞きません。「買った方がいいという意見を完全に論破した!!」といったタイトルの勇ましいコラムをこれまでいくつも見てきましたが,内容としてはチンケなものばかりで参考になるものは全くありませんでした。しかし不動産業界で売買と賃貸の両方を経験した私には確信をもって出した結論があります。
立場が変われば結論も違ってくるような問題
この問題のベースとなっているのは「家賃を払い続けるのと住宅ローンを払うのとどちらが得か?」というもので、大抵の場合それぞれ発生する費用の合計をシュミレーションして比較しています。
しかし何十年もの期間中に発生す住宅関連の支出の総合計など簡単にシュミレーションできるようなものではありません。計算方法を少し変えれば全く違う結論となったりするものです。
インターネットが出現する以前、家を借りるにも買うにも唯一の頼りだったリクルート社の「住宅情報」においてもこの問題は「特集」として時々取り上げられていましたが、同じ住宅情報でありながら賃貸版では「借りる方が少しだけ得」、一方売買版では「買った方が少しだけ得」という全く異なる結論を出していた記憶があります。つまり立場によって結論も変わってくるような問題なのです。
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「どちらが得か?」は簡単には言えない
入居者が頻繁に入れ替わることを前提とした賃貸住宅に対し、分譲住宅は永住することが前提となっています。そのため部屋の内装といった質の点では間違いなく分譲の方が良かったと思います。
賃貸の場合は入れ替わりの度に何らかのリフォーム工事が入りますし、何かあれば退去した時交換すればいいという意識が家主の意識の中にどこかしら感じられました。
またオートロック、宅配ボックス、防犯カメラといった現在のマンションに欠かせない設備に関しても、まず分譲マンションで普及してから賃貸住宅にも広まったという経緯があり、やはり分譲住宅の方が質が高かったように思います。
一方で分譲住宅の場合、故障等による設備の修理は当然のことながら全額自己負担です。分譲マンションの場合は専有部と共有部に分かれていて、ごくごく大雑把に分けると玄関の内側で起こったことについては自己負担となります。
それに対し賃貸住宅の場合、消耗品関係を除き設備の故障については家主負担となっています。また退去時における原状回復に際しても、国土交通省ガイドラインや東京都住宅紛争防止条例(東京ルール)により自然損耗や経年劣化については借主は負担しなくてよいとされています。
分譲の場合固定資産税が架かると言いますが、賃貸の場合も更新料や契約時の諸経費があり、借りるのと買うのとどちらが得かということは簡単には言えないのです。
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「どちらが得か?」は些末な問題
家というのは生活の場ですから、どのような家に住むのかということは、その人がどういう生き方をしようとしているかを示すものです。
住む場所は当然大切です。同じ田園都市線沿線でも桜新町、溝の口、鷺沼、青葉台、南町田のどこを選ぶかで全く違った生活になります。これらの街にはそれぞれ違った特徴があり、単純に渋谷に近ければいいというものではありません。
またマンションの強みは利便性で戸建の強みは独自性だと思っていますが、人生の中でこのどちらを選択するのかということも大切です。
家を探すという事はこれだけ重要なことなのですから、「買うのと借りるのとどちらが得か?」などという些末なことで悩むのはやめましょう。「買いたい」と思うような物件があったら買えばいいし、逆に「今が買い時」などという声は無視すればいいのです。
賃貸住宅は高齢者に厳しいという現実
しかし賃貸住宅を語る上でどうしても避けることが出来ない問題があります。賃貸物件の営業をやっていた時代に痛感しましたが、日本の賃貸住宅は高齢者に非常に厳しいというのがどうしようもない現状です。
高齢者の場合現役世代と違って収入面が限られるということと、室内で万一のこと(要するに孤独死)が起きる可能性が他の世代より高いという事が原因として挙げられます。実際の所、高齢者を受け入れてくれる物件はかなり限れられていましたし、仮にOKという場合でも内容のいい親族が保証人となり、かつ近くに住んでいることといった厳しい条件がつきした。
また高齢者可であっても年金の範囲内で借りることが可能な物件は限られます。そのような年齢になってエレベーター無しの4階など住めるでしょうか。
前述の「完全に論破した!!」の筆者はこの問題に関して「はっきり言ってウソ」と断定し、その根拠として「私自身賃貸住宅の大家だが、年齢にかかわらず部屋を貸している。」「高齢化社会になればサービスは一層充実していく」という2点を挙げています。前者に関してはこの人個人の考えであって一般的な貸主の姿勢とは言えず、後者は単なる希望的観測にすぎません。
この程度の理屈で「論破した」と言い、本まで書いているのですから「コンサルタント」や「不動産投資家」なんていい加減なものです。
どうしても借り手がつかないような物件は別として、一定以上の水準の住宅についていえば、高齢者がその他の世代と同じ土俵で家探しができるという事はあり得ないと思います。
リタイアするまでにはどこかで買っておいた方がいい
家は借りるのと買うのと「どちらが得か」という問題はおそらく今後永久に決着はつかないでしょう。しかし「どちらがいいか」ということなら、リタイアするまでにどこかで買っておいたほうがいいと私は思います。
景気やら地価やら金利やらといった「買い時」にまつわる雑音は一切無視して、「買いたい」と心から思える物件に出会った時に腹をくくって自分で決断するようにしてください。
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