鎌倉にも本場京都に負けない庭園があります。そこで誰もが知っている有名な場所から普段は非公開の完全な穴場まで、鎌倉を訪れた際に是非おススメしたい珠玉の庭園を選んでみました。
多くの人の努力で復活した「鎌倉の庭園」
京都と比べると鎌倉は庭園を売りにした寺院が少ないように感じます。鎌倉は三方を山に囲まれた狭い場所であったため、そもそも庭園を備えた寺院がつくりにくい街であったといえます。しかもそのほとんどが戦乱や災害によって失われてしまいました。
しかし多くの人の努力により埋もれていたものが発掘され、また過去の資料を基に復元され、現在では鎌倉のあちこちの寺院で美しい庭園を鑑賞できるようになっています。
京都に負けない珠玉の「庭園」8選+α
建長寺庭園(国指定史跡、国指定名勝)
建長寺は盤石な権力基盤を確立した執権北条時頼が創建した禅宗の寺院ですが、鎌倉五山第一位というだけあって周辺の寺院と全く規模が違います。
広大な敷地に総門・山門・仏殿・法堂・方丈といった伽藍が一直線に並ぶ「禅宗様式」が印象的です。地震や火災によって創建当時の建物は失われ、現在我々が目にするのはほとんどが江戸時代に移築もしくは再建されたものですが、全体として鎌倉時代を代表する禅寺としての空気を感じることができます。
方丈裏にある庭園は「心」という文字を表す東西に延びた池を中心に構成されており、鶴島と亀島の二つの島が設けられています。
建長寺の建物と同様に庭園も度重なる災害や改修により何度も姿を変え、鎌倉時代の面影はほとんど失われていると考えられています。現在の庭園は、江戸初期・延宝年間に描かれた絵図に基づいて、平成15年に復元整備されたものです。
円覚寺庭園(国指定史跡、国指定名勝)
鎌倉五山第二位で建長寺と並び鎌倉四大寺院の1つとされる円覚寺(えんがくじ)は元寇の戦没者を弔う目的で執権北条時宗によって創建され、度重なる火災や地震により衰えた時代もあったものの、江戸時代後期に伽藍が復興されました。
境内には複数の庭園がありますが、名勝指定の対象となっているのは総門前の白鷺池と方丈の脇にある妙高池です。
白鷺池は総門の手前の線路を隔てた踏切の向かい側にあり、「降魔橋」という石橋でつながっています。明治時代に横須賀線建設にあたって強引に境内に線路を引いたためこのような姿になってしまいました。
方丈の北東にある妙香池(みょうこうち)は天然の岩をくり抜いて造られており、鎌倉時代の創建当初からのものです。
方丈裏にも庭園がありますが、こちらは平成12年、妙香池の整備と同時に作庭されたようです。平成のものといっても特に違和感はなく、見事な造りだと思います。
瑞泉寺庭園(国指定名勝)
瑞泉寺は1327年にこの時代を代表する高僧で、庭造りの名手としても知られる夢窓国師により創建された寺院です。中興した足利基氏以降、鎌倉公方足利家の菩提寺となっています。
本堂裏の庭園は夢窓疎石による岩盤を削って作られた禅宗様庭園で、書院庭園の起源となりました。この庭園は昭和45年から翌年の発掘調査によって復元されたということなので約500年埋まっていたということでしょう。
岩壁には、水月観の道場としての「天女洞」と「坐禅洞」が掘られ、前面の貯清池には島が設けられて橋が架かっています。
光明寺庭園(浄土宗の世界を描いた庭園)
浄土宗の大本山である光明寺は円覚寺、建長寺、遊行寺と並んで鎌倉四大寺院の一つに数えられています。
高さ20mの山門は1847年に鶴岡八幡宮から移築してきたもので、鎌倉で最大の山門です。
大殿南側の三尊五祖の石庭は枯山水で浄土の世界を描いたものです。
奥の三石が極楽浄土の阿弥陀仏とその脇士たる観音・勢至の二大菩薩を表し、手前の五石が浄土教を説法流布された釈尊(印度)善導(中国)法然・鎮西・記主(日本)の浄土宗五大祖師を示します。
金堂や阿弥陀堂の前面に池をつくり蓮を植え、花園を設けた浄土式庭園である記主庭園もあり、7月には観蓮会が催され蓮を見ながら抹茶をいただくことができます。
報国寺中庭(竹林と抹茶以外の見どころ)
「竹寺」として知られ、ミシュランで三ツ星を獲得した報国寺ですが、孟宗竹の竹林や茶席でいただく抹茶以外にも魅力的な場所があります。
拝観口から本堂の裏手に出ると美しい枯山水の中庭が広がっています。報国寺は竹林だけではなくこの中庭もなかなかのものです。
明月院本堂後庭園(ハナショウブと紅葉の時期だけ公開)
北鎌倉の「アジサイ寺」として有名なのが明月院です。平安時代に創建された小さな寺院が数奇な運命をたどって現在まで存続しています。アジサイの季節には平日朝の渋谷駅のように混雑する明月院ですが、その時期さえ外せば静かで美しい境内を落ち着いて楽しむことができます。
本堂の有名な「悟りの窓」は悟りや大宇宙を表しており、大人が通り抜けることが出来るくらいの大きさです。混雑していなければ奥の縁側まで入れるようです。
通常は非公開となっている本堂後庭園ですが、ハナショウブの季節と紅葉の時期には特別公開されます。※常時公開に変更になったようです。その際、ユニセフの募金箱に300円寄付することが求められています。(2020年11月現在)
海蔵寺庭園(年に一度1時間半だけ公開)
「十六の井戸」「底抜の井戸」などにより「水の寺」として知られる海蔵寺はよく手入れされた境内に咲く四季の花の美しいことでも知られています。
しかし最大の穴場は本堂の裏手にあります。
庭園は非公開で、普段はここまでしか見ることはできません。
2月~3月にかけて開催される「梅かまくら寺社特別参拝」の中で1日(それも1時間半)だけ公開されます。
この部分は普段は死角になっており、特別参拝の時しか見えません。
長寿寺(アジサイと紅葉の時期だけ公開)
最後にご紹介するのが長寿寺で、もともと足利尊氏が自ら屋敷としていた場所に1336年に創建したものです。
公開されるのが春季(4月~6月)秋季(10月~11月)の金・土・日・祝だけという限定公開ということで、あまり多くの方には知られていないようですが、境内全体が庭園といってもよいような場所です。
長寿寺では「心静かに拝観のこと」という趣旨の貼り紙が至る所にあります。それだけ落ち着いて美を鑑賞することに特化した場所です。
〖番外編〗浄光明寺裏庭(年に一度だけ公開、SNS投稿禁止)
浄光明寺の裏庭は凝灰岩の岩盤を削って作られたコンパクトなものですが、池と岩壁からせり出した松の巨木が見事に調和した大変に美しい庭園で、NHKのブラタモリを始めとしてテレビでも度々取り上げられています。
2月~3月にかけて開催される「梅かまくら寺社特別参拝」において年に1日だけ公開されますが、往復はがきによる事前申し込みが必要で先着順になりますので、拝観を希望される方は十分に注意してください。
写真撮影は「SNSに投稿しないのなら」という条件付きだったので、ご紹介できるのはこれだけです。
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