今回は伊勢神宮内宮に隣接したおはらい町とおかげ横丁をご紹介します。参宮街道に沿って昭和初期の建築様式の木造建築が立ち並んだ街並みが人気となっており、伊勢市を代表する観光地となっています。おはらい町の中間点で垂直方向に分岐しているのがおかげ横丁ですが、どういう訳かおかげ横丁の方が知名度が高いようであり、両者を混同している人も多いのではないでしょうか。(私も現地へ行って初めて両者の違いがわかりました。)
- 「日本一滞在時間の短い観光地」を再生したのは赤福の社長だった
- 超人気スポットのおはらい町で食べ歩いた
- 伊勢特有の街並みを忠実に再現したおかげ横丁で食べ歩いた
- デザートとして代表的伊勢名物を満喫した
- 江戸時代の街並みには秘密があった
- 街づくりの貴重な成功事例
「日本一滞在時間の短い観光地」を再生したのは赤福の社長だった
おはらい町通りとは宇治橋から五十鈴川に沿って北に約700m続く参宮街道です。
この辺りは明治の初め頃まで御師(おんし)と呼ばれる世話人たちの館が建ち並び、全国から来た参詣客をお祓いや神楽でもてなしたことから「おはらい町」と呼ばれるようになりました。
江戸時代には年間200~400万人もの参詣客で賑わっていましたが、モータリゼーションが進行した1970年代後半になると参詣客はバスや車で宇治橋前まで乗りつけ、お参りを終えるとそのまま次の訪問先へ行ってしまうという状況になってしまいます。伊勢神宮の参詣者は500万人を超えていたにもかかわらず、おはらい町を訪れたのはその内で僅か20万人という状況にまでなり「日本一滞在時間の短い観光地」とまで呼ばれました。
そこで立ち上がったのが赤福社長の濱田益嗣です。有志を募って昭和54年に「内宮門前町再開発委員会」を結成し、伊勢の伝統的な町並みの再生を始めました。
この動きに三重県や伊勢市も協力した結果、わずか10年で江戸時代の街並みをよみがえらせることができました。
超人気スポットのおはらい町で食べ歩いた
おはらい町には伊勢うどんを始めとする料理店、赤福に代表される地元の名産品を扱う土産物屋等が軒を連ね、年間で500万人もの人々が訪れる超人気スポットとなっています。
宇治橋前のおはらい町入り口付近です。
電線が地中化され、路面は石畳で統一されています。建物の高さが揃っているので街がすっきりとしています。
「カキフライ串」で有名な伊勢角屋麦酒です。
実際に食べてみました。右手にカメラ、左手に串、なおかつ紙包みの底にタルタルソースが溜まっているためこのような写真になりました。
おかげ横丁が近づいてきました。
有名な赤福本店です。
伊勢特有の街並みを忠実に再現したおかげ横丁で食べ歩いた
おはらい町の整備と並行して、濱田は赤福本店の西側エリアに伊勢特有の街並みを自力で忠実に再現し、これを「おかげ横丁」と名付けます。これによりおはらい町はかつての賑わいを完全に取り戻すことが出来ました。
おかげ横丁の入り口です。おはらい町とは垂直方向に伸びています。
おかげ横丁はかつての街並みを忠実に再現しています。
伊勢うどんの「ふくすけ」もこの一角にあります。
デザートとして代表的伊勢名物を満喫した
伊勢を代表する名物を満喫すべく赤福本店に向かいました。
こちらでは五十鈴川に面したこのような眺めの中でお茶とお菓子を楽しむことができます。
伊勢に来たらこれを食べずに帰る訳にはいきません。
江戸時代の街並みには秘密があった
僅か10年で江戸時代の街並みを再現できた裏側には伊勢市の景観形成基準があったといえます。
そこには「建築物の形態意匠の制限」としていろいろとやかましいことが書いてありますが、その中に「ただし、道路等の公共空間から通常望見できない部分はこの限りでない。」という一文が書き込まれています。つまり道路から見える場所だけを江戸風にしてしまえばそれでいいのです。
そのためよく見るとこんな光景を目にすることもできます。
江戸時代風の建物に根本的に改修するのは大変ですが、これなら比較的容易にできます。
ここでは銀行も街並みに合わせています。
郵便局も例外ではありません。
ポストは郵便事業の創業時に使用されていたものを再現したものだそうです。
ちなみに御木本道路と御幸道路が交差する「宇治浦田」の交差点で見た標識です。
街づくりの貴重な成功事例
景観というものは一度壊してしまうと取り返しがつきません。「近代化」という言葉に流されることなく「日本的なこころのふるさと」を追求した結果かつての賑わいを取り戻したおはらい町は街づくりの貴重な成功事例だといえます。
今後もこの景観を守り続けて頂きたいと思いました。
※観光カリスマと呼ばれた濱田益嗣ですが、一方で「外人は来てほしくない。いたらおかしいでしょ。」と発言して騒動になったそうで、確かにこれはいただけません。
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